群馬県と地防協主催による令和5年度高圧ガス輸送車両等防災訓練研修会が去る9月27日(水)県消防学校において67名が参加して開催された。
栃原孝信技術委員の司会により進められ、高橋均消防学校長からの挨拶、続いて鈴木実会長の挨拶があり研修会・訓練が始められた。
基礎訓練・座学では「GUNMAの防災」と題して県危機管理課稲田防災対策主監からプロジェクター画像資料等を使っての講義があった。基礎訓練・体験としては県消防学校教官の指導のもと「煙体験」と髙橋委員長・宮嶋委員による「液化酸素、液化窒素の特性試験」が行われた。
総合訓練・実験では高橋技術委員長を隊長として高圧ガス充填容器を積載する車両における積み方・固定方法に焦点をあてた事故予防訓練の実演が行われた。高圧ガス容器の積載方法や固定方法の違いによる容器転倒発生原因やその防止対策を再確認することができ、大変充実した有益な研修会であった。
閉会にあたっては植野県消防保安課課長から講評を頂いた。
なお、当日の運営において県消防学校の福田副校長、事前準備を含めた各種調整に、今井教務係長から多大なご協力を頂いた。
○研修会
(1)基礎訓練・座学
「GUNMAの防災(スライド)」
群馬県危機管理課 稲田防災対策主監豪雨、台風、火山噴火、地震など様々な自然災害による被害状況やその防災についてスライド投影による講習が行われた。群馬県は大きな自然災害がおこりにくいという安全神話がまことしやかに囁かれているが決してそのよう事は無く、いつ大災害に見舞われても不思議ではない事を改めて認識した。近年は西日本豪雨や熊本豪雨といった線状降水帯の発生による豪雨災害が多く発生しており甚大な被害となっている。
災害への備えは「自助」「共助」「公助」があり、防災・減災の基本は自助、共助であることが過去の災害から分かっており自分の身は自分で守ることが最も重要である。
群馬県では防災士養成講座にて防災士を養成している。また群馬県庁に動画・放送スタジオtsulunos(ツルノス)を開設し、広報機能を強化した。災害時のトイレ問題への対応としてトイレトレーラーを導入している。
稲田主監は実際に被災地に赴き救済活動にも携わった経験から「支援」は「必要なタイミング」に「必要な物資や人的援助」を届ける事が大切であることの説明をされた。支援物資として送られてきた物の中には古着や使えない物なども多くあり処分に苦労した話なども聞かせて頂いた。
(2)基礎訓練・体験
①「煙体験」
消防学校施設内にある煙道地下室を使って、煙が蔓延した中を進む事がいかに困難かを実感する模擬体験を行った。
煙幕が充満され消灯された地下煙道(片道約10m)は数十センチ先も見えない状態となっていた。この何も見えない煙道の壁に右手を這わせてゆっくり前進し、突き当たりの毛布状の柔らかな壁までたどり着いたら今度は同じようにまた右手を壁に這わせて引き返した。
途中で携帯電話のライトを点灯してみたが光が煙に吸収されたかの様で役に立たなかった。何も見えない状態の中を進む事の難しさを実感し、煙に巻かれる事の危険を体験した。
基礎訓練・実験
②「液化酸素、液化窒素の特性試験」
高橋 浩(新洋酸素(株))
宮嶋 章(カンサン(株))液化酸素と液化窒素を実際に使用して超低温液化ガスの特性について実験した。
真空二重製のガラス容器に片方は透明な液体、もう片方は淡い青色の液体が入っていた。
淡い青色の液体が酸素で透明な液体は窒素であるが、多くの訓練参加者は液化酸素、液化窒素を実際に見ることは初めてだった。空気を注入し細長く膨らませた風船を液化窒素の中に入れるとみるみる風船が縮んで風船の中に液体が存在している事が確認できた。これが液化空気だった(写真①)。
また炎を消した線香を液化酸素に近づけると線香は激しく光を放ち燃焼した。(写真②)
更にはバラの花を液化窒素の中に入れ(写真③)、完全に凍結さてから花びらを握ると花びらが粉々に砕け散った(写真④)。
超低温液化ガスの特性を実際に見ることが出来た。
(3)総合訓練
「高圧ガス充填容器を積載する車両における積み方・固定方法に焦点を当てた事故予防訓練」
高橋 浩(新洋酸素(株)) 、
上原 武、増田崇志(上毛天然瓦斯工業(株))
宮嶋 章、津石将範(カンサン(株))
瀬戸正一(群馬燃料(株))
西脇良行((株)サンワ)どんな場合に積載容器の固定が緩みやすいのか、また、緩んだ場合の危険性を認識することを通して容器の正しい積載方法、固定方法を学んだ。
昨年9月愛知県の高速道路上でLPガス容器積載トラックが追突事故に遭いLPガス容器の荷崩れが発生して容器が爆発炎上し1名死亡、2名負傷という事故が起きている。
今回トラックの荷崩れ発生を実演し確実な固定方法や危険な固定方法を実際に見ることにより注意点などを改めて認識する事ができ有意義な訓練となった
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